現在の競技計測は自動化・機械化が進み、非常に精度の高い判定ができるようになりましたが、こうしたシステムができる前はすべて人間によって計測が行われていました。
この手動計測は、選手一人に複数の計測員が配置されるため、大勢の計測員を必要としました。複数で行えば計測タイムにバラつきが生じることがよくあり(むしろ一致するほうが稀)、ルールが定められていたようです。
全員のタイムが一致していればもちろん問題なくそのタイムが公式記録となりますが、ズレている場合、一致している人数の多いほうのタイムを採用したり、全員がバラバラの場合は最速と最遅を切り捨てて中間値を採用したりしていたようです。
そのようなバラつきが常だったので、2位選手のタイムがトップを上回ることもあったようです。その時には1位選手のタイムを計測上速い2位選手のタイムに揃えていました。
当時は着順がすべてでタイムは記録用と考えられていたため、着順が明確な場合は問題にならなかったのです。しかし判定が微妙な場合は、選手の不満もあったようですが、確かめることも再現することもできないので、ただ泣き寝入りするしかありませんでした。
公平性・信頼性の高い今日の計測に至るまでには諸先輩の努力とさまざまなドラマがあったのだと想像が膨らむばかりです。