より速く、より高く。
陸上競技の記録は未踏の領域を目指して、鍛錬と試行錯誤を重ねていますが、マラソンでは最遅記録というものが存在しています。
マラソンは数十年前からずっと日本人に親しまれ、全国各地でフルマラソンの大会が開催され、多くのランナーが参加しています。参加する市民ランナーの関心のひとつに、「制限時間内に走ること」があるのではないでしょうか。多くのマラソン大会は制限時間を6~8時間に設定していますが、マラソンの最長記録は、なんと「54年8カ月6日5時間32分20秒3」! 記録保有者は日本人の金栗四三という人物。この金栗四三は「日本マラソンの父」と呼ばれるほど大きな貢献をした人で、人気テレビドラマの登場人物にもなっています。
1912年に開催された世界大会に参加した金栗はレース途中、今でいう熱中症のような症状となり昏睡状態に。そしてコース付近にある民家に保護され、目覚めたのは翌朝だったようです。金栗はゴールを諦めて日本へ帰国。この時、棄権申請も行わず、大会関係者も事実把握できていなかったこともあり、記録上は競技継続のままになっていたそうです。その後、時は流れ1967年。当時の記録を調べていた人が、完走も棄権もしていない状態である金栗を発見。そして金栗へ連絡し、晴れてゴールすることができました。
金栗がゴールした時には、大会終了のアナウンスが流されたそうです。この時「長い道のりでした。この間に嫁をめとり、6人の子どもと10人の孫に恵まれました」とコメントを残しており、会場は大きな感動の拍手と歓声に包まれたそうです。