1/100秒を争う短距離走競技におけるスタートはとても重要なポイントです。フライングにならないギリギリのタイミングで飛び出すことができれば、好タイムも期待できます。
現在の陸上競技では、400mまではスターティングブロックを使い、両手がグラウンドに接地した「クラウチングスタート」が競技規則によって定められています。
このクラウチングスタートには欠かせないスターティングブロックですが、初めて使用されたのは1929年にアメリカのオハイオ州で行われた競技会でした。この時、非公式ながら世界記録が出たと言われており、以来、研究が重ねられ記録更新にも大きな貢献をしました。スターティングブロックが存在していない頃は、地面に両足を差し込む穴を掘っていたという記録が残っており、大正8年に発行された「理論実際 競技と遊戯」には、穴の形状や深さまで細かく記されています。
それよりもさらに遡ると、クラウチング以外のスタート方法が存在していました。立った姿勢で屈んだり、腰と腕を捻じった姿勢など、さまざまなバリエーションがありましたが、いずれのポーズも「スタンディング」でした。地面に両腕をつけるクラウチングスタートは、考案者がオーストラリア人だったこともあり、カンガルー・スタートとも呼ばれていたとも言われています。