文 村上アンリ
写真 近藤 篤
フレッシュカジノ 初回入金ボーナスが活気づくはずだった2020年。新型コロナウィルスの影響下で、世界のフレッシュカジノ 初回入金ボーナスは活動を制限されました。この状況を柔道家で競技者のサポートもされている野村忠宏さんはどのように感じているのでしょうか。再始動した柔道のことや来年の展望について、また、技や力の強さだけではない柔道の精神についてお聞きしたことを、前後編に渡りご紹介します。
目次
待ちに待った日本柔道界の再開
2020年は本当に色々なことがあった1年でした。日本柔道界も先日の講道館杯を皮切りにようやく活動が再開しましたが、今の率直な感想を伺えますか?
フレッシュカジノ 初回入金ボーナス界ではまず野球、サッカーといったプロフレッシュカジノ 初回入金ボーナスが動き始め、そこに続いて柔道を含むアマチュア競技も動き始めましたね。まだまだ安心できる状況ではありませんが、やはり嬉しいニュースです。
関係者の皆さん、特に選手たちにとっては非常に厳しい時間だったと思います。
この7、8か月間、選手たちは本当にきつかったと思います。練習ができない、試合もなくなる、目標としてきた世界の舞台もどうなるのかわからない。とりあえず1年延期という判断が下されたからいいですが、もしあれが中止という決定になっていたら、大げさではなく、生きる支えがなくなってしまいましたよね。
野村さんが今現役選手なら、どんな風にこの厳しい時期を過ごしていましたか?
20代前半、後半、そして30代、それぞれのステージで自分との向き合い方も違ってきますが、もし自分が世界を目指している選手であるなら、やはり日々の中でやれることを見出し、柔道が再開するのを待っていたでしょうね。柔道がこの世界から永遠に消えて無くなることはないわけで、いつかは再開する。ならば、再開したとき、やっぱり野村はすごいな、と言ってもらえるような自分を作っていったと思います。
かつて大活躍された野村さんだからこそ、現役選手たちの苦しさやもどかしさも肌身で感じられるのではないですか?
すでに競技の世界に身を置いていない自分には、今回の時間のつらさは具体的にうまくイメージできません。でも一つ確かなのは、現実を受け入れ、困難を突破する、そういう力がある選手しか生き残っていけないということです。
柔道の父、嘉納治五郎師範の教え
柔道家としての生き方そのものを問われる、そんな時間でもあったのかもしれませんね。
柔道には「精力善用」と「自他共栄」という言葉があります。柔道で鍛えた心と体を有効に使って社会の役に立て、他者に対して感謝し、助け合う心を育みながら素晴らしい世界を共に作っていく。これが柔道の創始者である嘉納治五郎師範の基本理念なわけです。世界中どこの道場に行っても掲げられている言葉ですが、今年はこの言葉の意味を改めて考えさせられました。でも、困難な時間は必ずしも悪いことばかりではなかったかもしれません。
というと?
柔道の世界というのは、ある意味で縦社会、そこには良い部分もあれば悪い部分もありました。しかしコロナが始まってから、その社会の中に面白い変化も現れました。
例えば現役選手たちがSNSで始めた「#standupjudo」という活動があります。みんなと会えない、道場でも練習できない、そういう状況の中で、それぞれがSNSという場を通して、自宅でできる練習とか、トレーニングを発信するんです。
その活動に年齢や立場を超えた広がりが生まれ、その活動に海外の選手たちも応えてくれました。
逆にこういう状況に追い込まれなければ、自分たちで何かを作り出そう、生み出そう、という意識は生まれなかったと思います。
それは野村さんにとっても意外な展開だったのですか?
意外でした。本来は道場に通って、先生がいて、仲間がいて、そこで練習するという日常が、道場に行くのを我慢する非日常に変わる。そんな中、これまでは練習面倒臭いな、やりたくないな、と思っていた子供たちが、早く練習したい、仲間と会いたい、と思うようになる。皆がそこまでの気持ちになったからこそ、トップ選手、レジェンドと言われる先輩方が子供たちの柔道熱が冷めないようにSNSを通じて柔道の情報を発信するようになった。私もYouTubeを使って、一人打ち込み、といった練習方法を解説も入れて発信したりしています。対面で手取り足取り直接指導するのが信条の自分がまさかこんなことをやるようになるとは、思ってもいませんでした。
野村忠宏が注目する一戦
そんな大きな変化を受けての柔道界の再開ですが、ここから野村さんが注目されているのは?
まずは12月に行われる予定の男子66キロ級の代表決定戦(東京五輪柔道男子66kg級日本代表内定選手決定戦)、阿部一二三と丸山城志郎の試合です。阿部選手と丸山選手の試合は、柔道史上初めてのワンマッチ代表決定戦、それだけでも注目の試合です。この2人の柔道家は同じ時代に生まれていなければ、それぞれが4年に1回のチャンピオンになっていたレベルの選手です。ワンマッチですべてが決まる、ある意味では本番の金メダルをかけた決勝よりも緊張感のある試合かもしれません。もちろんどちらが勝つかなんて、私にも予想はつきません。
※11月11日に取材しました。
その後、年内最後のイベントとしては、講道館で行われる全日本柔道選手権大会(無差別)があります。
この大会で選手たちがどのようなパフォーマンス、試合を見せてくれるかも非常に興味があります。トップ選手たちも子供たちと同じように、4月以降は、数か月練習できなかったし、やっと練習ができるようになっても、緊張感のある出稽古には出かけられなかった。試合から離れた長い期間、そこを経てそれぞれの選手がどういう柔道を作り上げてくるのか。このコロナ禍で自分が柔道とどう向き合ってきたのか、自分自身とどう向き合ってきたのか、それを問われ試される試合なわけですから。
※12月26日 全日本柔道選手権大会(男子無差別)、12月27日 皇后杯全日本女子柔道選手権大会(女子無差別) 講道館で開催される。
武道としての柔道と、フレッシュカジノ 初回入金ボーナスとしてのJUDO
柔道というのは1882年に嘉納治五郎師範が創設し、1964年に正式な競技として五輪に採用されたことで、一気に国際化が進みました。今では世界中、200の国と地域で愛されるフレッシュカジノ 初回入金ボーナスとなっています。一方、武道としての柔道は、教育的価値のあるものとして受け入れられています。野村さんの中では、漢字で表記する柔道とアルファベットで表記するJUDO、どちら側に重心が置かれているのでしょうか?
自分の中では一緒ですかね。外国に行くと、日本人よりも柔道の本質とか哲学とかの部分を深く考えている方もいっぱいいるし、とにかくフレッシュカジノ 初回入金ボーナスとして勝てばいい、と捉えている方も大勢います。これはもう国とか地域とかではなく、それぞれの価値観によります。
日本が求めるものは正しい柔道、相手としっかり組み合って一本で勝つ。でもそれはあくまでも日本の考え方に過ぎない。柔道が正式種目として採用されて世界に広まった以上は、あくまでも決められたルールの中で戦うしかないですから。でも、外国の選手にも、日本的な柔道への憧れを持っている人はたくさんいますよ。
自分たちの慣れ親しんだ美しい柔道ではない柔道を見ると、こんなの柔道じゃない、と否定したくなる感情もありますか?
例えばサッカーの試合で、日本がブラジルを相手に、守りに守って勝ったとする。あんなのサッカーじゃないって言われたら、悲しいじゃないですか。世界最高と評される国に勝つために、努力して戦術を練って、自分たちのスタイルを作り上げてようやく勝ったのに、それはサッカーじゃないって否定されたら嫌ですよね。それと同じで、柔道を一つの競技として捉えれば、それぞれの選手に戦い方、スタイルがあるのは当たり前のことです。
確かにそうですよね。それぞれの国にそれぞれの価値観や文化もあるし、こうでもしなければ勝てない、という力の差もありますよね。
柔道の国際化というのはどんどん進んでいます。20年前、柔道の強豪国は限られていました。韓国、フランス、あるいはロシアなど。国によって強いか弱いか、が分かれていました。でも今は、コソボ、イスラエル……そんな国からもときどきとんでもない選手が出てくる。メダルの分布図は広がっています。柔道は世界に広がり、今度はそこに深みも出てきました。
タックル禁止など、ルールも進化する柔道
ルールに関してもよりエキサイティングでダイナミック、そういう柔道を目指す方向に変わってきていると聞きます。野村さんから見て、ここ数年で最も大きなルール変更は何になりますか?
やはり足取り、腰から下へのタックルが禁止されたということじゃないでしょうか。これはしっかりと組み合うことを促すルールです。
確かに組まないで戦う柔道は、一時期主流になりつつありました。
ジャケットレスリングと揶揄(やゆ)されるような状況でしたからね。あのころは明らかに柔道のダイナミックさが損なわれていました。ルール変更に関しては、寝技も以前よりしっかりと見るようになりました。我々のころは5秒間こう着状態になると、すぐに待てがかかりましたが、今は10秒、20秒、審判がしっかりと見るようになりました。
ルールの変更にいかに早く対応できるか、その柔軟性も選手に求められる資質の一つですね。
海外の選手の優れている点は、そのルールの変更に短期間でアジャストできることです。日本の柔道家たちは正々堂々とルールのど真ん中を行こうとする分時間がかかりますが、外国人選手は時には反則ギリギリのところでの戦い方、また柔軟な発想で新しい技術をどんどん生み出します。
選手を取り巻く技術的な面も日々進化していると伺っています。
日本柔道には「GOJIRA」という映像分析システムがあって、これにアクセスすると各国の選手の試合映像をすぐに手に入れることができます。
3年ほど前、すでに男女全階級において2000人以上、約1万試合の映像とデータがあると言われていました。
相手選手の得意技はすぐにわかりますが。例えばその選手の試合運びのくせ、技を仕掛けるタイミング、あるいは審判もそれぞれどういう傾向で反則を取るのか。そういったことをしっかりと理解した上で、試合に挑めるんです。
野村さんは現役時代、あまり相手のことを研究しないで試合に臨むことで有名でしたよね?
私の場合はそうです。あまり相手を知りすぎると、相手のイメージ、動きを警戒しすぎて自分の柔道が出せなくなるタイプでしたから。しかし、データを活用するしないは個人の判断に委ねられるとしても、多くの引き出しを持つこと自体は必要だと思います。
コロナ禍で柔道家としての生き方そのものを問われ、柔道に向き合うための意識の変化が起こった、そんな逆境がさらなる高みを目指すための鍵になっていくのかもしれません。試合も再始動したということで、後半は柔道の精神世界について、そして、プレッシャーと戦うアスリートの葛藤、世界の舞台に向けての展望について、語っていただきました。
後編はこちら
柔道家・医学博士
野村忠宏
1996年アトランタオリンピック、2000年シドニーオリンピックで2連覇を達成。2年のブランクを経てアテネオリンピック代表権を獲得し、2004年アテネオリンピックで柔道史上初、また全競技を通じてアジア人初となるオリンピック3連覇を達成する。
2015年8月29日、全日本実業柔道個人選手権大会を最後に、40歳で現役を引退。国内外にて、柔道の普及活動を展開。また、テレビでのキャスターやコメンテイターとしても活躍。自身の柔道経験を元に講演活動も多数行い、全国を飛び回っている。
※別ウィンドウで野村忠宏さんのサイトへリンクします。