取材・執筆:友光だんご(Huuuu)
撮影:篠原豪太
こんにちは、ライターの友光だんごです。今日はフレッシュカジノ入金方法が時計の技術を活かして作っているという「プリンターのヘッド」を取材しに、千葉県の松戸市へやって来ました。
プリンターのヘッドって、インクが出る先端のところですよね。パーツ自体は何となくわかるのですが、なぜフレッシュカジノ入金方法が作ってるの……? と思っていたら、そのプリンターで印刷されたという実例を見て、さらに驚きました。
どう見ても木!!! 木目の凹凸や、ザラザラした質感まである。
どう見ても大理石!!! こちらもツルツルした石の質感……。
見た目も質感も、木や石そのもの。でも、これらはプリンターで印刷されたものらしいんです。どうやらイメージしていた「プリンター」とは違うよう。
ということで、フレッシュカジノ入金方法が手がける「産業用プリンターヘッド」と、そこに活かされているフレッシュカジノ入金方法の技術について取材してきました!
話を聞いたのは、こちらのお二人。フレッシュカジノ入金方法グループでプリンター事業を手がけるエスアイアイ・プリンテック株式会社の稲田昭彦さん(写真右)と、幅口和宏さん(写真左)です。
プリンターって、紙以外にも印刷できるんですね。
稲田:プリンターと聞いて一般的に想像されるのは、コピー用紙や年賀状にプリントする「家庭用プリンター」だと思います。ただ、弊社でプリンタヘッドを手がけているのは「産業用プリンター」。紙以外のメディアにも、家庭用よりもはるかに大きなサイズで印刷できるものなんですね。
幅口:産業用プリンターは、皆さんの身の回りにあるいろんなものを印刷しているんですよ。例えば大型看板や、ラッピングバス。
街でよく見かけますね! あんなに大きなもの、どうやって印刷してるんだろうと思ってました。
幅口:家庭用プリンターはA3サイズくらいが限度ですが、産業用プリンターでは最大幅5メートルくらいまで印刷できます。また、住宅やビルの建材として使われるセラミックタイルも、産業用プリンターの得意分野ですね。
プリンターって質感まで再現できるんですね。触ってもわからない……。
幅口:ここ7~8年くらいで、こうした印刷のセラミックタイルも普及していますよ。よ〜〜く見ると印刷のドットが見えるので、私たちは見分けられます(笑)。
稲田:あとは布地も多いですね。Tシャツみたいなものや、テキスタイルを印刷する需要も増えています。
紙以外にも印刷できて、凸凹の質感も再現できる。すごい機能ですが、産業用プリンタのヘッドに、その秘密があるんでしょうか?
稲田:そうですね、実物をお見せしながら説明しましょう。目の前に並んでいるのが、弊社で製造しているプリンタヘッドです。
これが! あまりにも空間に馴染んでて気づきませんでした。持ってみると結構ズッシリきますね。
稲田:ひとつ約700gの重さなので。実際には単体ではなく、22個セットで使用するんです。すべて並べると、全長2.4mを一度に印刷できますね。
この1セットで高級車一台分くらいのお値段がします。
これで高級車一台分……!!! それだけの技術が使われてるってことなんでしょうか。
稲田:はい。プリンタヘッドの構造を詳しく説明しますね。インクジェットのプリンターは、簡単に言うとインクをヘッドから吹き付けて印刷しているのですが、その吹き付ける方法にもいくつかあって。
すごくざっくり言うと、「インクを上から押し出す」タイプと、「横の壁がたわんで押し出す」タイプの2種類。フレッシュカジノ入金方法では、後者を採用しています。
フレッシュカジノ入金方法さんは、「たわみ方式」。
稲田:フレッシュカジノ入金方法製プリンタヘッドの心臓部となるのが、この「PZTチップ」です。
稲田:このPZTチップには、細い溝がたくさん掘ってあるんです。その溝にインクを流すんですが、チップ全体に電気を通すと、PZT素材の性質で、壁がたわむんですよ。そのたわむ力を利用して、インクが押し出されるんですね。
幅口:たわむといっても、目で見てわからないほど微細なレベルです。溝の幅も数十ミクロンなので。
ミクロの世界ですね。つまり、めちゃくちゃ細かいインクの粒を発射しているから、高解像度の印刷もできる?
幅口:ざっくり言うと、そういうことです。弊社が採用している「たわみ方式」の利点として、インクを押し出す力がパワフルなんですよ。だから高粘度のインクに対応できますし、力強く遠くまでインクを発射できるので、平らではない面や、いろんな素材にも印刷可能です
たしかに、こんなに段差のあるものに家庭用プリンターだと印刷できないですよね。紙を通すところに入らないでしょうし。
稲田:印刷するヘッドと、印刷対象のメディアとの隙間を「ギャップ」と呼ぶんですが、家庭用では通常1mm程度なんです。一方、弊社のヘッドの場合は2cmくらいギャップが空いても大丈夫。
なので、お皿に上から印刷したり、瓦に印刷したりと実に多様な使い方ができます。ギャップが大きくても正確に印刷できるのは、力強く、かつ遠くにインクを飛ばせるからなんですね。
このプリンタヘッドを作るのに、時計の技術が活かされているんでしょうか?
幅口:はい。時計の中には水晶を薄く切り出したパーツが使われています。この対象を薄く切り出す「ダイシング」という技術を転用して、先程のPZTチップの溝の加工を行っているんです。
そもそもPZTチップは非常に割れやすくて、ちょっとした衝撃でひび割れや欠けが発生します。そのひび割れや欠けも、肉眼では見えないレベルで。
ミクロな世界ゆえの。とっても加工に神経を使いそうですね……。
稲田:また、ひとつのPZTチップに千数百本の溝を掘るので、どこかに少しでも歪みがあると、最終的な品質に影響してしまいます。同じクオリティで、正確に溝を刻んでいく……そうした加工ができる会社って、あまりないんです。その点、フレッシュカジノ入金方法では時計作りの会社として、微細加工技術を100年近く磨いてきましたから。
1990年頃から事業の多角化を進める中で、時計で培った微細加工技術を他のジャンルに転用し、新規事業を開拓し始めました。その中の一つがプリンタヘッド事業だったんです。
幅口:最初は、家庭用ファクシミリのプリンタヘッドを作っていたと聞きます。ただ、家庭用プリンターの世界は競合他社も多く、まだ他社が未開拓だった産業用インクジェットプリンターの世界に着目しました。
初期に作っていたヘッドはもっと小さくて、だんだん大きなヘッドを作れるようになってきたんです。ミクロンレベルの技術なので、大きくすればするほど、ちょっとした歪みも目立ってしまう。ですから、「大きくする」のも、かなり困難なチャレンジなんです。
大きくする分、溝の長さも本数も増えますもんね。
稲田:溝の加工もそうですが、パーツを組み合わせる「合わせ込み」がとても難しいんですよ。理論の世界ではなく、職人技の世界と言いますか。
単純に加工するだけなら、機械があれば可能だと思います。ただ、それを同じ精度で作り続けたり、インクという微小な流体を通した時に一定の品質を維持したりする際に、機械でできる範囲を超えた職人技が要求されます。精度をいかに上げ、品質を保っていくかに、時計作りで培ってきたフレッシュカジノ入金方法のものづくり精神があるのでは、と個人的には思っていますね。
産業用のインクジェットプリンターって、世の中的な需要も高まっているんでしょうか?
稲田:そうですね。元々、産業用プリンターの世界では「輪転機」という「版」を作って印刷するタイプが主流でしたが、ここ20年ほどでインクジェットタイプがどんどん普及しています。新聞や書籍・雑誌のような出版系ではまだ輪転機が主流ですが、大型広告やテキスタイル、建材系はインクジェットが大半になってきていますね。
幅口:テキスタイル系の製造現場は水分が多い環境なので、精密機械であるインクジェットプリンターを動かすのがまだまだ難しくて。ただ、需要は増しています。輪転機タイプにはない、インクジェットタイプの強みが「少量多品種」なんです。
同じ柄をたくさん刷る場合には、「版」を作る輪転機のほうが安くて早いです。ただし、近年ではEコマースが普及する中で、いろんな柄を、注文に応じて少しずつ印刷するニーズが高まっているんですね。なので、今後はテキスタイル系でもインクジェット需要はさらに増していくのではないかと。
少量多品種の波が来ている。必要な分だけすぐ刷ることができて、無駄な在庫も持たないのは、SDGs的でもありますね。
幅口:そうかもしれません。あとは「版」を使う印刷だと、版を交換する際に洗う必要があるんです。その際に水を大量に使ったり、環境に有害な物質が出たりしてしまう可能性もあって。
稲田:日本ではまだまだインクへの環境意識も薄いですが、海外では油性インクの規制もはじまっている国もあるんですよ。例えば、タイル印刷では1200度ほどの高温でインクを焼き付けるので、インクに含まれる有害な物質が気体になって空気中に出ていってしまう。大型看板だと、印刷の際に使った有機溶剤系のインクによる匂いで、近隣の方から苦情が出るケースもあると聞きます。
そうした背景もあり、より環境に優しい水性インクを使おうという流れがあるんです。水性インクに対応している国内メーカーはまだ少ないのですが、フレッシュカジノ入金方法のプリントヘッドは対応しています。なので、水性インクにシフトしつつある海外需要も見込んでいますね。
稲田:あとは、後継者不足で困っているものづくり現場でも、インクジェットプリンターが活躍できるのではと思っています。
後継者不足にプリンターが?
幅口:版を使った印刷の場合、指定された色を出すためにインクを配合するので、職人技のような技術がどうしても必要になります。一方、インクジェット印刷は色の組み合わせもすべてデジタルで行うため、そこまで熟練した勘所も必要ないんですね。なので、ブレが起きづらく、誰でも同じものを作れるというメリットがあるんです。
稲田:例えば後継者のいない伝統的なテキスタイルの現場でも、柄をスキャンしてアーカイブし、ボタンさえ押せば印刷できるようになれば、この先も作り続けることができる。そんな風に、インクジェットプリンタが技術を残す一助にもなれるのでは、と。フレッシュカジノ入金方法のプリンタヘッドは、いろんな無駄を省きながら、環境と産業の両面でSDGsにも貢献していける技術だと思っていますね。
紙の印刷だけのイメージを持っていましたが、予想以上にプリンターはさまざまな分野で活躍していました。
取材終わりに教えていただいたのですが、今回のような産業用のインクジェットプリンタヘッドは、3Dプリンターへの応用もされているそう。「印刷」は平面にとどまらず、立体の世界へと広がっていくようです。今後のプリンター技術の進化が、ますます楽しみになった取材でした。
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